当院の理事長がドクターズ・ファイルさんからの取材を受けました。
・みちのクリニックは地域にどういった存在でありたいか?
・患者さまにどのように接するのか?
など分かりやすく記述していただきましたので
ぜひ一読くださいませ。
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道野 博史 理事長の独自取材記事
みちのクリニック
(香芝市/近鉄下田駅)
最終更新日:2023/02/06
近鉄下田駅よりほど近い「みちのクリニック」。合計22台の専用駐車場も備え、あらゆる交通手段で訪れやすい医院だ。道野博史理事長は救急の現場で長く勤務した後、2003年に開業。香芝の地に根を下ろして19年を迎えた。「患者さんは困っているから医院に来るわけで、それに対してやれることの引き出しが多いほうが良い」という思いから、救急での経験を生かした総合的な診療を実施。発熱専門の外来を開設するなど、幅広い診察を行う。また、それだけにとどまらず、病診連携による地域医療の向上にも尽力。「まずはこの医院に来れば何とかなる」という体制をつくりたいという道野理事長に現状とこれからについて話を聞いた。
(取材日2022年11月22日)
患者はもちろん、地域全体に貢献する医療をめざす
■ 先生が医師を志したきっかけからお聞かせください。
家族は皆商売などをしていて、医療関係の仕事をしている身内がいたわけではありません。代々、同じことをしなくてはいけないのではなくて、自分でやりたい道を探していく、自分で切り開いていくという家風だったんですね。将来何をするかを考えた時に、どうせなら人を助けることがしたいという気持ちがあり、医師をめざすことにしました。祖母や祖父、親戚が病気をした時に自分が何か手助けをできないかなと思ったことも、決め手の一つだったかもしれません。祖父は私が国家試験合格の電話をした1時間後に亡くなったんです。耳も遠くなり、病に伏せていたんですけれど、その時に限って電話を受けたんですよ。何か運命めいたものがありますよね。
■ もともと開業をめざしていたのですか?
医師になるタイミングで、一つの目標として開業は考えていました。開業することで、自分ならではの診療をしたいと思っていたんです。そのためには、いろいろな症例を診ていたほうがいいと思い、救急部に勤めました。おかげでさまざまな経験を積めたと思います。総合的な判断で「このままでは危ない」というような「におい」を察知する力を身につけられたのは大きいですね。当院は「患者さんが医療を受ける際の窓口であること」をコンセプトに、整形外科を中心に内科、小児科と幅広い診療を提供しています。この地域で開業して、やりがいがある仕事をさせてもらっている代わりに、自分は地域に対して何が貢献できるかも常に考えています。もちろん医療で貢献するのが第一なんですが、患者さんだけでなく、周りにも広がっていくような診療ができるのが理想ですね。
■ 香芝という地域を選んだのはなぜですか?
難波や岬町など候補地がいくつかあった中、若い世代も増えてきているということで、先を見据えて香芝を選びました。自分の子どもが生まれたばかりだったこともあり、子育てにも良いのかなと考えたんです。でも最初は大変だったんですよ。当時は診療所が少なく、大きな病院に通う人が多かったんですね。その病院には小児科も外科もあり、手術もできるようなところだったので。そんな状況の中で丁寧に診療を続けていくことで、クチコミじゃないですけど、1人ファンができて、また1人できて、というような形で、今では多くの方に来ていただけるようになりました。
病診連携により、地域全体がチームになる医療を
■ 救急での勤務が長いですが、現在もその経験が役立っていますか?
医院というのは地域医療の最前線にあるので、いろいろな方が来られるんですよ。中には本当に急を要するケースも。ところが新型コロナウイルス感染症の流行以降は、発熱や腹痛の場合も感染の疑いがあるので、すぐには診てもらえないんです。そこで私は発熱症状の患者さんを診療する外来を設置して、発熱や腹痛でもすぐ診られる環境を整えました。発熱の外来は車やテントなど専用スペースで行い空間的に分けることで、患者さんの安全を守る体制をつくっています。腹痛でいらした患者さんをすぐに病院へ送って緊急手術というようなケースもあり、スピード感が必要な診断というのは存在します。これまでに救急の現場で多彩な経験をさせてもらったことが、そういう場面で役立っていると思いますね。医師の仕事というのは、経験したことがないとできないこともたくさんあります。救急での経験は、開業するにあたっての大きな財産だったと思います。
■ 幅広い症状の患者さんを受け入れているんですね。他院との連携についてはいかがでしょう?
自分の専門外は他院の先生にお願いする病診連携や診診連携を積極的に推進しています。訪れた患者さんの症状を診て、一番ふさわしいところを紹介するわけですね。自院で抱えすぎず、病院や医院が垣根を越えて役割を分担し合う仕組みができれば、患者さんのためになります。それができるように、私は横のつながりも大切にしながら診療してきました。地域全体で患者さんを支えることが望ましいと思いますし、当院には私の診療が必要な時に来てくれたらと思っています。当院には幅広い年齢層の患者さんが訪れ、主訴も多岐にわたりますが、特にコロナ禍になってから、身体面だけでなく精神的な疲れを訴える方やケアが必要な方が増えてきている印象があります。ですから、診療の際はただ機械的に身体面のケアをするのではなく、その方の精神面や取り巻く環境を含めて総合的に診た上で患者さんに寄り添うことを最も心がけており、その方法を常に模索しています。
■ クリニックの医師は理事長だけなのですか?
確かに医師は私1人なのですが、事務も看護師もチームとして動いていて、実は1人で診療を行っているわけではないんですね。救急から医療に携わっていたため、人一倍チーム医療の大切さを理解しているつもりです。発熱患者さんの外来にしても、診療時間内で滞りなくできるのは、皆が連携して準備などをしてくれるからで、これも当院の魅力だと思っています。また、いろいろな方に来ていただきたいという思いから、患者さんをいかに待たせずに診療するにはどうしたらいいかということも皆で話し合っていますよ。ウェブ予約やSNSを導入してIT化を進め、不要な接触の減少や待ち時間の短縮を図るなど、全員で工夫しながら、患者さんのために何ができるかを考えているんです。
患者とその家族、地域のためにできることはすべて行う
■ 発熱症状を診る外来について詳しく聞かせてください。
最初の緊急事態宣言が出た直後くらいから、発熱症状を診るための外来を設けました。風邪だと診療できず、薬を渡せない状況でしたので、どうしても定期薬をお出ししないといけない患者さんを診たいという思いもあったんです。地域でも早いうちに始めたのですが、当初は「ここで感染者が出た」という風評被害のようなものも多くて。SNSで拡散され、知り合いの先生から「大丈夫か?」と電話がかかってきたりしましてね。大変ではありましたが、私は目の前にいる患者さんに何ができるかを考えて行動しています。必要とされることは全部やろうと思っている以上、その過程でストレスがかかるのは仕方のないことなのかもしれません。それでも結果的に患者さんのためになれば、という思いで動いていますね。
■ どんな年代の患者さんが多いですか?
年齢層の幅が広く、新生児から最高齢は104歳までいらっしゃいます。お孫さん、娘さん、お母さんの3世代で来てくれていた方に、ひ孫が生まれて4世代で来てくれるなんてこともあって、とてもうれしいですね。例えばお孫さんはアレルギーがあるのでその対策を、少し血圧が上がってきたお母さんには血圧の薬を、骨粗しょう症のおばあちゃんには骨の薬を、という感じで、家族全体のかかりつけにしてもらっています。家族みんなで一緒にいらしたりすることもありますよ。それは19年、同じ場所で診療を続けてきた一つの結果ですね。今後は介護も必要になってきますから、その整備やケアもしていきます。家族構成がわかっているので、スムーズに状況を理解できるのもメリットですね。実際に訪問介護施設とも連携を取り、マネジメントや相談もしています。
■ 今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。
これからも、自分だからできるという診療をしていきたいです。継続するイコール同じことをし続ける、ではなくて、良い方向にアップデートしていかないと、継続することもできません。医師としてのスキルアップはもちろん、IT化など医院としての環境面でも、できることをしていきたいと思います。あとは、何かあった時に気軽に相談していただける窓口になりたいですね。困ったら、とりあえず「みちのクリニック」に行っておけば安心できるという存在になればいいなと思っています。